暮らすということ

たぶん誰もが一度は聞いたことがあるだろう井伏鱒二の「さよならだけが人生だ」という言葉は、井伏本人の名前を置いたまま一人歩きしている感じがある。(正確にいうと井伏が漢詩を訳した時にうまれた言葉なんだけど)私はこの言葉に対して「幸福が遠すぎた…

木星

教員として働き始めてから数ヶ月が経った。暮らしも慣れてきて、出勤のためにわたる道もルーティンの一部のようになってきた。 想像していたよりも遥かにひとは何かを抱えているらしい。気楽そうに見える者も、無償の優しさを振り撒く者も、すぐには手放すこ…

待ち合わせ

いつも私がいるべき場所はここじゃないような気がしていて、でもじゃあどこならいいのかと問われると答えられない、私はいつ誰とどこにいてもふとした拍子に砂漠のことを考える。自分自身の肯定作業のために人生なんかに誰が付き合ってくれるっていうんだろ…

誰かの神様になりたかった

辿り着けなかったところがたくさんあって、それをある種の概念や価値観の違いだと片してしまうには陳腐すぎるくらい、私は私の脳の作りだとか感性だとかに絶望してきた。 生まれ生き死ぬ、その三つの手順をすべて踏み終わったら、人は次のステップに行けるの…

屈伸 欠伸

学生じゃなくなってしまった。春は追い詰められる。夏は橙色の西日に責められているような気がする。 大学生活は何をするときも夢見るようで、混沌としていて、一心不乱だった。文学は私の命綱のようなもので、多分、本当に全く学問に興味がない人間として生…

心地よい生活

そういえば大学最後の夏休み直前、試験が終わった日に、友達とまでは呼べないくらいの知り合い2人と芥川の特別企画展を見に行った。展示の中央には芥川の生前の住居の模型が置いてあり、木造のそれを興味深く見て、私がぽつりとこんな家に住みたいなぁと漏ら…

週末のために

好きな男と付き合ってから私と好きな男はずっとくっついていて、くっついたままダラダラとおでかけをしていた。好きな男は私の手を引きながら、時には腰を抱きながら、前から来る通行人を避けさせたりした。そうやってくっついたまま目的もなくダラダラと歩…

やってる感

わたしは本当は大学院に行きたかったんだけど、というか今も行きたいんだけど、好きな気持ちとは裏腹に、わたしには別に特別な閃きのようなものはないんだなあということがこの4年間で身に染みて分かった。わたしは子どもの頃、というより高校生の頃まで、も…

共感されなきゃ感情じゃないかな

人と長年一緒にいるとその人にしかない奥ゆかしさ、才気、知性みたいなものが分かってくると思うんだけど、わたしは親しい友人のそういう玄奥な部分が大好きで、それが本質なのか側面なのかは置いておいたとしても、やっぱり尊敬しているってことに帰着する…

ミラクル丸腰

高校生一年生の頃はじめて会った時からずっと特別な女の子がいて、どれくらい特別かというと、私がその日持っていた憂鬱がその笑顔ひとつでチャラになるくらい。彼女の人生にもいろんな一喜一憂があると思うけど、否応なしに最後には幸せになってほしい。 同…

本ばかり読んでます

問題を先送りにしてとりあえずの娯楽で自分の誤魔化すことがよくある。本当によく考えなきゃならないことも今すぐ手をつけたほうがいいこともあるのに、うっかりひと休みしてしまったせいで今もダラダラとただ生活を空費している。 この凄惨な社会で精神的な…

やさしさ

わたしはよく“運命”って言葉を使うんだけど、そこには「そうであってほしい」という祈りみたいな感情も込められていて、存在しえた他の運命を殺すための言葉でもあるから、いつも少し浅ましいなって思う。わたしにとっての運命は神さまがしたためた完璧な筋…

嫉妬もできないくらい圧倒的に負けたい

帰省中。 外に出ると都会よりも濃い夏の雨上がりみたいな湿った匂いがして、ここで生きたいよなあとか思った。昨日も今日も蛙が大きい声で気持ちよさそうだった。 赤ちゃんが泣いているのを見ると「いいなあ」と思うときがあり、羨ましいと感じる自分を不思…

運命

怒りという感情は疲れるので悲しみに転換しようと初めて意識したのは中1のときで、暫くはうまくいったりいかなかったりしたけど、関与しているコミュニティの中でわたしへの理不尽や横暴があろうともすべて単なる厄災なので、キレ散らかしたりせず、円滑な人…

辿り着けない

前も書いたかもしれないけど、自分はアポストロフィーの途中なんだって大学生になってからずっとずっと考えていて、わたしは周りにせっせと硬い殻を作り、そのなかで自分をゆっくり殺している。それが完成のための全てになれたらいいけどな〜。結果じゃなく…

ぼくだけのへや

ぼくだけの世界を作ろう ぼくだけのへや ぼくが集めてきたフィギュア ぼくがブサイクな卒アル ぼくが抱きしめられなかった あの子の声

つまずくのをみて

両親から貰った莫大な愛を抱えて右往左往している滑稽さに気付いたので、金輪際誰にも理解されなくても誰に嫌われても誰に石を投げられても、ずっと私が私を愛し続けるって決めた。ついでに人間まるごと愛せたらいいなあ 雪が降る日の厚い雲が大好きなんだけ…

無念

何がトリガーになっているのかは分からないけど何もできなくなってしまう期間がある。お風呂に入ると体も心も少しはさっぱりすることは分かっているんだけど、体を引きずって洗面所までようやく辿り着くのは深夜3時を回ってからで、だから睡眠時間も足りない…

墜落

診てもらっていた主治医の先生が別の病院に勤務することになってしまった。しかもその病院では診療を行わず、機械による治療を担当するようで、私の心のうちを明かしたたった一人の大人は消えてしまった。結局何もかもうまくいかない。今度こそ、この調子、…

息のできる死骸

この1年間の人との関わり合いの薄さと言えば異常なほどで、本当に人間社会で生きているのかも分からないくらい堕落した生活を送っていた。そのあいだ文明が与えた恩恵と厄難についてしばらく考えたりしていた。 自分が普通の状態ではないのにこれまで通りに…

夢の中まで出てきたにおい

実家で飼っていた二匹の犬がそれぞれ死んでしまった時の喪失感を思い出していた。私よりも遅く生まれてきたのに、私よりもずっと早く消えてしまった、小さくあたたかな命。 その時の家族全員の憔悴ぶりといったらこの上なかった。私は朝から晩までひっきりな…

同じように

無人島で暮らしたい。海が近くにあるところ。娯楽を選択することはできないがとにかくニコニコしてる犬がいて、野菜を育てたり、野草を採って煮たりして暮らしたい。それなのに現実は電子機器に囲まれ、大きな鉄の塊に体を運ばせている毎日。へんなの

3分間で済みそうな生活

私はかなりセンシティブな人間だとは思う。なんというか“多感なお年頃”から抜け出すことができずにとりあえず21歳になった。終点のないことを考え続けては疲弊して肩で息をしている。 半年くらい前に大学のある教授に対して不信感があったので意見してみると…

怒りや悲しみや羨望や嫉妬や愛といった類の

誰にも奪われたくない。でも私はお前らから奪っていい。何だって全部、私の方が欲しがっているから。 私の手が一切届かないところでぶくぶくと沈んでいく虫みたいな奴が気に入らない。二度と這い上がれないのに足掻くこともしないから。その諦めたような姿が…

懐かない部屋

かわいそうな自分を慰めながら歩いている。お前らとは違う、分かり合えるわけがない、そうやって、地に足が着かないことに理由を与え続ける自分を。堂々巡りの毎日で、朝になるまで必死に意識にしがみつく自分を。 ここで一人暮らしを始めてあっという間に3…

正しさを義務付けられている

部屋で金木犀が香っている。私が帰ってきた途端にどんよりと暗くなるこの部屋で。花の匂いに慰められ、あんずの香水に励まされ、ずっと水をやらなくたって枯れたりなどしないサボテンに後ろ指を刺されている。絶対に忘れないままでいようと思っていたことに…

副船長になった

自分のことしか考えることができない。 日々や生活という言葉に毎日苦しめられ、他人を圏内に入れた暮らしを送れない。どうしようもなくなって呪詛を吐き出してばかりいる。こうして文字に起こしてしまえばやっと自分のものではなくなるようで、縋るように、…

呪った

自分の人生を少しでもよくするためならなんでもやってやるぞという気持ちで色んなことに手を出してきた。夢だ目標だと語りながら足りない部分を補うように資格や免許を取った。でもそんな付け焼き刃の知識は社会では何も通用しないことが次第に分かってきた…

ステロイド

絶対朝起きたらこれをやろう、絶対やるんだ、と決めて寝た次の日、全然予定通りに起きれないと、もう全部だめになってしまう。100か0かしかなくてひとつのことがうまくいかないとその日は何もかも0点。正当な点を上手につけてあげれるようになりたい。 実家…

負け犬にしてはプライドが高い

取り返しのつかないような強い毒が塗りたくられた針がずっと前から私の人生に刺さっている。もうどうしようもなく軽蔑していた人のことを何かのはずみでうっかり許してしまった。自分の人生に余裕がなければ、特定の人についてムカついている暇なんかないん…