怒りや悲しみや羨望や嫉妬や愛といった類の

誰にも奪われたくない。でも私はお前らから奪っていい。何だって全部、私の方が欲しがっているから。

私の手が一切届かないところでぶくぶくと沈んでいく虫みたいな奴が気に入らない。二度と這い上がれないのに足掻くこともしないから。その諦めたような姿が気に入らない。アクセルにもブレーキにも宿敵にも宗教にもなれない自分が悔しい。何の理由にもなれず、教えてもらえることもなく、唇を噛みながら見ていなきゃいけないような気がしてしまって。

少しずつ整理できていたようなしがらみをまた増やしてしまう。生きるって多分そういうことで、捨てては得て、得ては捨てて、の繰り返しなんでしょうね。一度でいいからその輪の外に出てしまいたい。なんにも捨てられない。みんながいとも簡単に燃やして灰にしてしまえるものを私だけが必死に抱え続けたままで濃密になりすぎてしまった。無理やり深海から上げられた魚は水圧の変化でバラバラになってしまう。だから私は自分のことを抱きかかえて、丹念に海の底に沈めている。