正しさを義務付けられている

部屋で金木犀が香っている。私が帰ってきた途端にどんよりと暗くなるこの部屋で。花の匂いに慰められ、あんずの香水に励まされ、ずっと水をやらなくたって枯れたりなどしないサボテンに後ろ指を刺されている。絶対に忘れないままでいようと思っていたことに限って日常で思い出せない。忘れないぞと誓った意気込みに満足してしまうらしい。そんな、気持ちばかりが先行した宝物のことを考えては足元がふらつき、もう二度と来ない瞬間のことを反芻しては落涙しそうになる。いつも無力だった。