動かない永遠

わたしが働いている学校は湿っぽい。曇天の日は廊下がビタビタになっている。モップをかけても雑巾で拭いても変わらない。晴れていても渡り廊下はやたらと翳りがあり、変なところに虫が死んでいて、使っていない空き教室の机はごちゃついていて、そして職員はみんな病んでいる。人間の生活を捨てている人、過度に期待をされている人、日を跨ぐギリギリまで仕事をする人、そういう人たちが、お互いの陰口を言い合うことでなんとか現場を回している。終わってると思う。驚くほどに陰気で陰湿で粘度が高い不幸が張り付いた職場だ。わたしは働き方改革を進めたい人とやたら献身好きな人が生み出すギャップに挟まり手足を捥がれている。仕事したい人はすればいいし、そうじゃなければ必要最低限分こなして帰るのがヘルシーに決まっている。上からの厳しい目に見張られて、無理をしないとサボっていると思われる。無気力のくせに人からの視線を常に気にしている私は、やる気があるふりをしている。子どもたちが可愛くて仕方ないのに彼らに費やす時間よりも事務的な処理をしている時間の方が圧倒的に多く、もどかしさと苛立ちが募る。もう仕事を本当に辞めた方がいい気がする。来年度もこの職員室で楽しくもないのにニコニコするのだと思うとそんな自分に嫌気がさす。いつから私の人生は仕事に所有されているのだろう。生徒が言う。授業面白かったです。分かりやすかったです。この科目を好きになれました。それだけでいいのに。それだけでいいはずなのに。