本ばかり読んでます

問題を先送りにしてとりあえずの娯楽で自分の誤魔化すことがよくある。本当によく考えなきゃならないことも今すぐ手をつけたほうがいいこともあるのに、うっかりひと休みしてしまったせいで今もダラダラとただ生活を空費している。

この凄惨な社会で精神的な健康を保つためには何か大好きなものがひとつくらいあったほうがいいと思っていて、さらに言うとそれはできれば人間関係以外が望ましい。変化し続ける者同士で慰め合うのは不安定で、人にはどんなときも微動だにしない圧倒的な拠り所が必要だと思うんだけど、今の私にとってのそれは読書であって、最近は狂ったように本を買っては読んでいる。何も考えられない日は一文字たりとも読めないこともあるけど、とにかく、本を読めている時間は確かに、穏やかで安寧であると思う。何かを忘れたいから本を読んでいるのか、何かを忘れているから本を読んでいるのかは分からない。スマホを片手に1日を終えるよりは遥かに有意義だと思うけど、スマホひとつで投資だって起業だってできる現代で、読書が持つ崇高さのようなものは薄れているようにも思う。

この間(7月頭)、中学生の頃から好きな女性作家が単行本の新刊を出して、最近ようやくその限定のサイン本を入手することができた。初めて手に入れることができたサイン本だったので、私はそれをすぐに読み終えて、宝物のように、お守りのように本棚に飾っている。こういう経験がどうしようもない人生の土台になってくれる気がする。これまでは読み終えたら次の本を買うようにしていたけど、最近はそういうことをあまり考えずに、欲しいと思ったものはどんどん買うようにした。次に読む本がある状態は良い。生活には適切な闖入者が必要だし、今はそれで日々の拍を取っている。

私はあまり生活において刺激は要らないと思っていて、こうして自分の時間があって好きな本を読むことができれば、あとのことはそんなに気にしない。でもそれは多分、多くの社会人からしたら喉から手が出るほどに欲しいものでもあるんだろう。これが当然さの不在。歯痒い。ブランドものが好きじゃなくて良かった。私のような人間がブランドものに熱をあげていたら、まったく満足できないまま、欲求だけを燻らせる日々だったと思うから。