待ち合わせ

いつも私がいるべき場所はここじゃないような気がしていて、でもじゃあどこならいいのかと問われると答えられない、私はいつ誰とどこにいてもふとした拍子に砂漠のことを考える。自分自身の肯定作業のために人生なんかに誰が付き合ってくれるっていうんだろう。靴紐を結び直してばかりいる。

怒涛の毎日が始まって、その日々の中に長閑な春の暖かさを感じるようになって、いつのまにか夏の湿潤を感じて、なりたくもない大人になってしまった。あんなに遠いと思っていた青春の終わりをいつのまにか迎えていて、これからの人生にあれと同じ煌めきはもう訪れないのかと思うと憂鬱で仕方がない。

もういなくなってしまった命のことを時々考える。

その命には柔らかな尻尾があり、よく動く耳があり、言葉を持たない代わりに牙を携えていた。その牙は決して本来の用途に使われることなく、焼かれて骨になった。骨だけになっても彼女は可愛かった。私の頭蓋骨ほどもないその骨が愛しくて哀しくて仕方なかった。無くなることは、失くすことは人生のすべてだと井伏は言うのに、どうやったって逃げられないものをどうやったって愛してしまう。

 

好きな町がある。晴れた日の山が綺麗で、放物線を描くように渡された橋を通ると視界は空の青で埋め尽くされる。次に会った時は現在の話をしよう。思い出話よりもずっと面白い話をしよう。わたしたちはきっと飛べっこないので、わたしもきみも変わらず弱虫のままでいられるので、それで大丈夫です。