心地よい生活

そういえば大学最後の夏休み直前、試験が終わった日に、友達とまでは呼べないくらいの知り合い2人と芥川の特別企画展を見に行った。展示の中央には芥川の生前の住居の模型が置いてあり、木造のそれを興味深く見て、私がぽつりとこんな家に住みたいなぁと漏らすと、知り合いは「こんな大きな家に住むなら家政婦がいないと。それに維持費もかかるし無理じゃないですか」と言った。いちおう「そうだね」と返事をした。なんでもよかった。早く帰って寝たかった。私はよくそうやって、背の高い木々の中にぽつりと家を建てて住みたいとか、少し歩いたところに小さな滝があったらなおよし、とか考えるのだった。

芥川展は面白かった。その横でやっていた平塚らいてふ展も良かった。夏の始まりとしてはかなりいいスタートだったと思う。いいスタートを切ったので、勢いでなんとか卒業までこぎつけることができた。先の不安は変わらずあるけど、一昨年の夏の錯乱の日々よりはずっと良い。