屈伸 欠伸

学生じゃなくなってしまった。春は追い詰められる。夏は橙色の西日に責められているような気がする。

大学生活は何をするときも夢見るようで、混沌としていて、一心不乱だった。文学は私の命綱のようなもので、多分、本当に全く学問に興味がない人間として生きていたのなら、昼も夜もない東京の街の端っこでとっくに野垂れ死んでいただろうと思う。東京には何もなかった。何もないから色んなものを作ったんだろう。私はその東京のど真ん中の超ギャル都市、精神的若者以外は侵入禁止とでもいうかのような活気に包まれた渋谷という街のすみっこで、ひたすら物語を読んでいた。物語は私を無造作に徹底的に変えてくれた。倫理も道徳も人間的な迷いもどうでもよくなるくらいに、私は文字ばかりを目で追っていた。

思えば私が東京という街にとてつもなく消耗したのは、自分の停滞をまざまざと見せつけられているようなスピード感のせいだったかもしれない。街も人も止まらない。止まっているのは私だけで、いつも焦っていて、顔を上げても下を向いても無様だった。だから私が選択できたのは「やり過ごす」ということだけだった。この嵐が過ぎるように、この大雨が止むようにみじめに願いながら。でも停滞は決して私にとって肯定的な作用をもたらすことはなく、すり減り削れて、遠くで暮らすことばかりを夢に見るようになった。