生き地獄という罪滅ぼし場

ひとりで部屋にいて、部屋には自分の気配以外なんも無かった。換気扇を回したら自分の気配ごとどっかいっちゃった。何もないのに何もないことがどうしようもなく虚しくて、途方も無いくらいの時間をこれからもここで過ごしていかなきゃいけないんだって思うと、私は全部全部だめになってしまった。若さとか時間とか、すべてを、灰にしてボロボロにして落としていたという事実に、未だに私は叩きのめされる。私が毎日徹夜で蔵書を調べ、資料を読み漁り、死ぬ気で考えてやっとの思いで纏めた研究結果は、同じグループの奴らにぐちゃぐちゃに浪費された。冗談は顔だけにしとかないとね、私もお前も。大丈夫お前らには脇役が似合ってるよ。

気が付けば死んだように、捨てるように生きている。生きる才能がない。どうしたって仄暗い私だから。人間という自覚があるならいつも潔白になんて無理。生きていける気がしないですよね、正気なんかでいたら。気でも狂ってないと、多分私はずっとずっと何もかもがうまくいかない。まだたった20歳の馬鹿な私は、自分より馬鹿な人間が嫌い。馬鹿のくせに頭がいいフリをしている人のことも嫌いで、人に何かを畳み掛けられることも、露骨に舐めた態度取られることも大嫌い。

電車に乗れば皆が呪われたかのように小さな液晶の中に入り込んでいる。見渡してみれば現実があるから必死に目を背けている。私たちはみんな揃って出来損ないの命なので。意思なく始まった廃材みたいな人生で、物足りないから夢を描いて、二人でいるようでいても、ほんとうは一人と一人がいただけで、っていうのを繰り返している。自分のことしか見えてなくて、自分一人でしか生きていなくて、でもたまに他人と居たくなって、なのに自分と他人との違いには寛容になれない私たちは、自分の中の思い当たる戸口にすべて鍵をかけ、そこに強引に入り込もうとする好意をひたすらに拒絶して生きている。

太宰治の「本を読まないということはその人が孤独でないという証拠である」という言葉で、バカな私はまた、一生誰にも分かられないと本気で思っていたときの気持ちが蘇ってしまった。全てにムカつく、お前らは舌で転がしてた言葉がおなかの中に沈んでいく感覚すらも知らないんでしょう。白濁した不透明な理由でもう全部が嫌になる感覚、主役と分かっていても一部なのを自覚してしまうこと、原因があっても本質ではないって、この意味が分かんないお前らは、しっかり指咥えて寝てればいいよ。