罪人のような気持ち

 

今も昔も才能が欲しくて、それこそ喉から手が出るほど欲しくてたまらなかった。私はずっとどこかで自分のことを特別な人間だと思っていた。気に喰わないものを才能で全部ぶっ潰したかった。そして未だにそう思っている。

本当は才能ってそういう風に扱うものではないってことは理解している。理解してるけど、分かっていても、誰も手が付けられないような甚大すぎる才能が欲しかった。でも大衆の中の自分を自覚していた私はもうどうしようもなかった。才能のことをふと思い出しては、まあこのままでいいやと思う気持ちの方がずっとずっと強かった。

私はこれまでもこれからも酒に飲まれることなく生きていきたい。酒飲んで人権をドブに捨ててる女の子たち、あの人たちのおかげで安い男とのセットがちゃんと出来上がって、しょうもない人間が私の前に現れないように炙り出されてる。ありがとうね。本当に本当に、バカでいてくれてどうもありがとう。お酒を飲んで朝起きたら昨日まで友達だった男の横で裸で寝ていた、みたいなハプニング、一生経験しないで、ずーっと綺麗なまま生きていきたい。これまで私に渋谷で声をかけてきた男はもれなく頭が悪そうな顔してた。私も相当馬鹿に見られてるのだろうと思って悔しくなった。"そう"見えなければ奴らは声をかけてこないんだから。きっとそう。私も大概アホ面をぶらさげて歩いているんだ。冗談は顔だけにしないとね。

私はこれまで何度も飽きることなく自分の部屋で孤独を味わった。外に出るというただそれだけのことが、私にとっては戦場に行くみたいに感じられた。何もかもが億劫で、荒廃した部屋で洗濯物を畳んでいるときだけが私を生の人間たらしめる時間だと思っていた。涙も出ないし血も流れない、暮らしを楽しもうとして可愛い食器を探してみても手に取ってみるともう何も考えられなくなって結局いつも手ぶらで帰った。肉体の中を肉体がくぐり抜けていくような毎日だった。親と同じように生きることがこんなに難しいことだなんて18のときは知らなかった。貴方は絵が上手いねと言われた、貴方は字が綺麗ねと言われた、貴方は頭がいいねと言われた、でもそれらは全て狭い狭い空間や期間で私を見た時の褒め言葉に過ぎなくて、私のアイデンティティとして語るにはとてもじゃないけど足りなかった。私が飲み下して満足していたそれは全部全部全部全部才能なんかじゃなかった。枕を濡らして朝を迎えたり学校のトイレで吐いたりしないと頑張ってるって言えないし。知ってる、クソ雑魚ナメクジのままじゃ褒めてもらえないし、見てもらえないし。